係一同大変お世話になった梶原さんというスタッフが、4月から新天地へ異動されることになった。
梶原さんは他部署所属の40すぎくらいの男性スタッフで、年齢の割に出世も早く、多くの部署で厚い信頼を得ている。
他部署の方が異動・退職する時はあまりこういうことはしないけど、、梶原さんには本当にいろいろお世話になったので、特別に係のみんなで花束を渡そっか!という話になった。
そして先日、うちの部屋に来た梶原さんに梅村係長が声をかけた。
梅村「梶原さん!梶原さん!異動のお話、聞きましたよ!」
梶原「そうなんですよ。みなさんには大変お世話になりました」
梅村「それはこちらの台詞ですよ。寂しくなりますね…いつが最後の出勤なんですか?」
梶原「3/29かなー?30もくるかもしれないけど。準備がどうなるか次第ですね。」
梅村「わかりました!そしたら最後の日は是非、花束を贈らせてください!」
梶原「あー、花束ね…。できれば花束以外のものがいいっす」
梅村「えっ」
梶原「多分どの部署からもお花いただくと予想してるので、そんなにたくさん車に入らないし…持って帰れないんですよね。持って帰れてもウチ花瓶そんなにないから飾れなくて…」
確かに、多くの部署と仕事をしている人気者の梶原さんが、最終日にスタッフから大量の花を貰って駐車場を何往復もする姿は容易に想像できる。
梅村「わかりました!じゃあ、何がいいですか?プレゼントは!」
梶原「んー、そうですねぇ。」
ちょっと考えて梶原さんは言った
梶原「…ボールペン?とか?」
そんなわけで、梶原さんへの餞別の品は高級ボールペンに決まった。
次の日のミーティングで、梅村係長からみんなに説明がなされた。
梅村「梶原さんへの餞別の品は、高級ボールペンを贈ることになりました。各自、良さそうなメーカーとかあったら私に教えてください」
宮内「予算いくらですか」
梅村「5000円くらいかな」
キャ「5000円のボールペンなんてあるんですか!?見たことない〜!」
優子「1000円でも高級ですよね」
キャ「万年筆じゃないんですよね?」
梅村「うん、ボールペン。色とかデザインもさ、梶原さんのイメージにあってるといいんだけど」
私は基本的に営業さんなどから粗品で貰うタダのボールペンを使っており、「ボールペンにお金を払う」という感覚が欠如しているので、5000円のボールペンが存在する事をにわかに信じられないでいた。
どんなキラッキラなデザインなんだろう…わくわくしながら私は早速「高級ボールペン」で検索してみた。
えっ…
ごまんえん??
にじゅうまん???
私の予想に反しまくり、むしろ5000円以内に収まる品の方がパッと見少なかった。
6ケタの文房具が存在すること。今まで無料のボールペンを使ってきた私には衝撃の検索結果であった。
もし私が餞別の品として10万のペンとかいただいちゃったら、毎日10万円が胸ポケットに入ってると思いながら仕事するのは緊張するし、失くした時のショックが半端ないので、
もし自分が辞める時は、ペンに10万かけるくらいだったら同じ値段のワインかアクセサリーにしてもらいたいなと思った。
途中で我にかえり、Googleに表示される高額商品を前に脳内インフレが起こっていることに気づいた。
あの梶原さんでさえ5000円しか予算組んで貰えてないのに、私は何を10万貰える気になっているんだろう馬鹿馬鹿しいなと思いながら仕事に戻った。
肝心の梶原さんの品は、まだどのメーカーにするか検討中である。