先月、産休職員が出た係の人員補充を、1番人数の多い我々の係から1名出すことになった。
我々の係もカツカツの人数でやっているところでその知らせ。雷に打たれたような衝撃が走った。
そして、出向する1名に選ばれたのが原田さんである。
原田さんは穏やかであまり怒らない人だし、20個くらい年下の私にも敬語で話してくれるし、仕事もどんどん率先してやってくれる。
そんなオアシスみたいな人がウチから異動になってしまうと聞いて、私たちは全員落胆していた。
しかしこの度、産休・育休が終わるまでの間の非常勤職員を採用してもらえることになったので、原田さんは来月から再び我が部署に戻ってくることになった。
現在人員不足であることプラス、人柄的な面でも彼女がまたウチに戻ってきてくれるのは大変喜ばしいことであった。
キャ「また原田さん戻ってきてくれるの最高ですね!」
赤石「人手の足しにもなるけど、何より原田さんいるとほっとするもんねー」
優子「この殺伐とした雰囲気がまた柔らかくなりますね!」
出戻りの話を聞いて部屋できゃっきゃ話していると、パートの滝野さんが何か言いたそうな感じで口を開いた。
滝野「原田さんは…どう思ってますかね?」
滝野さんの発言のあと、ちょっとの沈黙が訪れた。
きゃっきゃと話しながらも、恐らく今滝野さんが考えていることと同じような思いを全員が持っていたからだ。
滝野「向こうの係の方が居心地いいんじゃないですかね?うちに戻りたくないんじゃないですかね」
我が部署の中でうちの係は、外部の人と接する機会が比較的多い部門である。比較的多いというか、外部に接する部門は我々の係のみである。比較も何もない。
だから、部署の中でも対人スキルに優れていたり、打たれ強かったり、どんな相手にも自分の意見をはっきり言える強めの人間が必然的に配属されてくる。そういう人間が集まると、必然的に言い合いやバトルも多くなる。ほぼ毎日誰かがピリピリしている。飛び火に気をつけながら働かなければならない。
ちなみに私はコミュ力に長けているわけではないので、打たれ強い枠でこの係に配属になっているのだと思われる。
原田さんも全く自分の意見を主張しないタイプの人なので、私と同じく打たれ強い枠でここに配属となってるはず…
対して原田さんが先月から異動した係は、1番上の係長(56)は仕事ができてみんなから頼られ話も面白く、若い子とも結構同じ目線で話してくれる。その下の中堅は美人で気さくな姉ちゃんで、若手はみんなふんわり系でのんびりふわふわしてるが、仕事は全員めちゃくちゃできる。
業務も円滑だし、争いや派閥といったものとも無縁の世界である。
赤石「いや、絶対定時ダッシュできるし…いいでしょ。ウチ。」
キャ「保育園のお迎えとか、デートの日とかも困らないですよね」
優子「原田さんも学童のお迎えとかあるし、また早く帰れるの嬉しいと思ってますよ」
滝野「うちの良いところって、定時で帰れること以外ないの?」
うちのメンバーは我が強くても弱くても、全員「意思が強い」ということだけは共通しているため、全員定時で帰るという強い意思を持って毎日働いている。
まあ本音がどうであれ、原田さんは主張しない人なので、何の問題もなくうちの係に戻ってくると思う。
私と同じ打たれ強い枠のはずだし。