今日の午前中は 他部署へ派遣される当番であった。
しかし今日の業務はそこそこ暇で、ゆるゆると仕事をして昼休憩の時間を迎えた。
「じゃあ戻りまーす」
と一言言って出口の方へ歩いていると、「ちょっとキャンディさん、待って!」と、オバチャン職員の榊さんが小走りに近寄ってきた。
榊「これさぁ〜、知り合いの人が趣味で作っててね?たーーくさんくれたの。手作りタワシ!いっぱいあるからキャンディちゃんも持ってって?」
榊さんが広げる白地のビニール袋を除くと、鉤針で編まれた薔薇や蜜柑、くまちゃんなどを型取ったアクリルタワシが大量に入っていた。
キャ「可愛いっ。こんなにたくさん1人で作るなんて凄いですねー!」
私は、群馬県のゆるキャラであるぐんまちゃんのタワシを色違いで2つ選んで部屋を後にした。
廊下を歩き、自分の本来の部署に到着した。先程のぐんまちゃんを顔の横に掲げ、パペットマペットのように左右に振りながら「お疲れ様でーす」と言って、ちょっとお茶目な自分を演出して好感度を上げてから昼休憩に行こうとドアを開けた。
しかし、なぜかそこには電話対応している他部署の尾池さんがいた。
尾池さんが失礼しますと電話を切ったタイミングで、私は話しかけた。
キャ「なんで尾池さんがここに??」
尾池「いや、応援…」
うちの職場で、イレギュラーに応援を依頼するというのは本当にめったにないこと。
尾池「今日は4人しかいなくて、かつシステムトラブル起きたんだよね…だから呼ばれたんだ」
本来うちは10人で回している部署である。
普段の半分以下の人数に加えシステムが動かない、地獄と判明している状況に駆り出された尾池さんの気持ちを考えると、両の手にぐんまちゃんを持っている場合ではないなと悟った。
「すみませんね、私も今日は向こうだったんで…」
部屋の奥の方は さぞ戦場のようになっているのかと恐る恐る覗いてみたら、職員の数が少なすぎて逆に不気味な静けさだった。
私は殺伐とした雰囲気に合わないぐんまちゃんを隠しながら、足早に休憩室へと向かった。