今朝は早番で、いつもより早めに出勤した。
ロッカールームに入ると、いつも朝早くから出勤している平田さんが着替えていた。
平田さんは、定年を迎えた後も再雇用で働いてくれているオバチャン職員だ。孫も2人くらいいるらしい。
平田さんは大変気さくで面白いし、他部署への顔も広く、いつも頼りにさせてもらっている大ベテランの先輩だ。
しかし、前から心配なことがある。
平田さんは耳が遠い。
これは、年齢的に仕方ないことである。しかし最近は、聴力の低下に拍車が掛かっているような気がするのだ。
とりあえず背後から大きめの声で挨拶をしてみた。
「おはようございます!」
返事がない。
もう一段階ボリュームを上げて言ってみた。
「おっはようございまーーす!!!!」
返事がない。
周りの騒音も特にない。
私のデカい挨拶だけが響き渡る空間。
このまま自分のロッカーに向かって着替え始めても良いが、この部屋には私と平田さんの他には誰もいない。
わざわざ肩を叩いて挨拶するほどのこともないだろうけど、挨拶もなく部屋に入ってきたと思われたら気まずいし…
私は、わざと平田さんの視界に入るように少し大回りして自分のロッカーの前に行くことにした。コートの端をチラつかせてみると、無事に気づいてもらえた。
平田「おはようキャンディちゃん」
キャ「おはようございます!今日も寒いですねー」
平田「。。。。。。今朝は寒いねぇ」
キャ「寒いですねぇーー!!!!」
平田「聞いてよ私ね、年末年始から胃の調子おかしくてね?」
キャ「いっぱい食べすぎたんでs」
平田「おせちとか、お雑煮とか、お正月のご馳走全然食べられなかったのよー」
キャ「なるほどー!!!食べすぎたんじゃなくて!!年末年始にちょうど胃の具合が悪かったんですねぇ!!!」
平田「でも孫たちは来るからさぁ?自分は食べられないのにピザとかお寿司とかたくさん注文してさぁー」
キャ「平田さんもいっぱい食べたかったですねー!!!胃はまだ痛いんですか!!!??」
平田「まだ痛いの〜」
キャ「検査した方がいいですよ!!!」
平田「キャンディちゃんは食べすぎなかった?」
キャ「私、なんと、激太りです!!!今必死でダイエットしてます!!!お昼はスープ春雨!!!」
ハキハキ大きな声での会話を心掛け、最後に激太りを声高らかに宣言したところで早番の仕事に向かうと、男性職員である角田さんがやってきた。
角田「キャンディ、激太りしたの〜?」
キャ「つつぬけですよね」
角田「挨拶2回言ってたとこから聞いてたよ!男子ロッカーまで声が響いてたよ」
太ったことや、最近の昼飯事情を盛大に公開してしまった。
男子ロッカーに誰がいたか知らないが、我が部署には別に激太り宣言を聞かれたくないような男性など特にいないので、気にしないことにした。
また平田さんにロッカーであったら、コートの端と、補聴器のパンフレットもチラつかせてみたい