休憩室に入ると、岡島先輩(32)からのお土産が並んでいた。県内の温泉に1泊してきたらしい。
職場の独身男性が旅行に行ったと聞いて同僚の誰もが気になること、それは「同行者」である。
部屋からの景観や旅館の料理、酒の種類、近隣の観光スポット、到着までの所要時間なんかどうでもいい。誰と行ったのかがまず気になるところ。
でも、「誰と行ったんですか?」このたった一言が意外と聞きづらいのだ。
キャ「やっぱさ、彼女と行ったんかな?」
優子「岡島先輩って彼女いるんですか?」
キャ「私は知らない」
優子「聞いたことないですよね」
キャ「そういうこと全く話さないもんねー」
せな「でも…清潔感もあるし優しいし、見た目も別に悪くないから、作ろうとすればすぐできるタイプですよね」
キャ「聞いてみる?」
優子「いや〜、キャンディさん聴いてください」
キャ「よーし、聞いてやるよ」
せな「お願いします!」
キャ「まかせろ!」
とは言っても、別に岡島先輩の旅行の同伴者なんて、まぁ気にはなるけど絶対にどうしても聞きたい情報というわけではないし、いったんここは先輩らしく大きく出ておいて、時間と共に話を流れさせようとしていた。
すると、なんと岡島先輩がちょうどよく現れてしまった。
優子(ほら、お願いします)
キャ(うん…)
せな(聞いてください)
キャ(今オブラートに包んだ聞き方を考えているところだから)
私がもじもじしていると、梅村係長も休憩に現れた。
係長「あーら、美味しそうなお菓子がならんでるわね。岡島君温泉行ってきたの?」
岡島「はい!でも大変だったんですよー」
係長「何が大変だったの」
岡島「帰る途中、車動かなくなっちゃって」
係長「えっ、それは災難だねぇ。岡島君の車?お相手さんの車?」
岡島「僕のです。温泉は1人で行ったんで」
あっさり解決。