今日は、家を出るのが5分くらい遅くなってしまった。
こういう時、ほぼ全員が自動車通勤である地方民は、電車に乗り遅れてしまうリスクとは無縁なのが良いところだと思ったが、都会は数分に一回電車が来るので、電車に乗り遅れるリスクについてはさほど問題視されていない可能性に気づいた。
車は思わぬ事故渋滞、電車は人身事故や天候による遅延に巻き込まれることもあるので、交通手段の勝負は引き分け。
出勤時間が5分遅れるだけで、朝のオフィスの風景も大分違う。ロッカーの混み具合に始まり、いつも私より後に来る先輩が既に出勤していたり、コーヒーが既にできあがっていたり、機械が動いていたり、たった5分の間に行われていることってたくさんあるんだなぁと思い知らされる。
他の係の朝の様子を横目に見ながら自分の係の部屋に向かうと、パートの滝野さんが部屋の外で入り口のドアに寄りかかっていた。
滝野さんは私を見るなり駆け寄ってきた。
「ああー、キャンディさん!おはようございます!鍵開けてください〜」
なぜかうちの係は、滝野さん以外まだ誰も来ていなかった。
パートさんは鍵を持っていないので、正職員が来ないと中に入ることができず、ドアの前で途方に暮れていたようだ。
私は鍵を開けて電気を付けた。
いつもは、私が部屋に入ると4人くらいがもう出勤している。そのあと先輩たちや他のパートさんがパラパラやってくる。
なのに今日は誰もいない。
滝野さんと私しかいないパラレルワールドに迷い込んだ可能性も視野に入れつつ仕事の準備をしていると、数分して優子が入ってきた。
「遅くなっちゃいました…今日すごいお腹痛くて…」
出勤はしていたけど、一階のトイレに篭っていたらしい。
しばらくすると他のスタッフも次々に登場した。
事故渋滞や、子供を駅に送らないといけなくなった など、みんなの様々な理由が今日は偶然重なってしまったようだ。
遠方から来ている方や、家庭を持っている方も多いので、いつもより遅れたのには皆さんそれなりの正当な理由がある。
私も遅くなったけど、最初の方に到着してあまり目立たなかったのでよかった。
遅れた理由がジグソーパズルを進めていたからなんて言えないし。
もうすぐ完成。