今日の仕事は本当に忙しかった。みんな必死で部屋の中を行ったり来たり、まさに戦場。私もいろんな人から次から次にタスクを頼まれテンパっていた。
そんな戦いの最中、育休中の並木さんが現れた。
「人事に書類出しに来たんで、ついでに遊びに来ちゃいました〜」
我々の周りにはなんとなく火炎が見えるのに対し、並木さんの周りには花や蝶々が舞っていて、温度差がすごかった。
育休中久々の再会なので、本来であれば 赤ちゃん元気かとか、育児大変かとか、体調平気かとか、寝られてるかとか、そういうことを聞いてやるべきだ。でも全く余裕がなかったため、私は「おほ〜」とだけ声をかけてバタバタと自分の仕事に戻った。みんなそんな感じだった。
並木さんと一瞬の再会を果たしてから30分後、ようやくまとまった書類を出しに部屋の入り口近くのところに走ると、隅のデスクでお茶飲みながらのんびり座る並木さんを発見した。
テンパっていた私は、率直な感想がついそのまま口から出てしまった。
「なんでまだ居るんだ！？」
「すみません。息抜きさせてもらってます〜もう少し居させてください」
急いでいた私は並木さんが答え終わらないうちに奥の机に戻った。
またしばらくすると、お茶のマグカップを洗ってからのんびり帰っていく並木さんが見えた。部屋を出てからまた廊下で誰かと話していた。
並木さんはうちの係では一応一番下の期なのに、走り回る我々先輩陣を尻目に堂々と休憩していて、度胸がすごいなと思った。お茶まで飲んでたし…
でも、こんな殺伐とした雰囲気の部屋でもしっかりリフレッシュされて、あんなに生き生きした表情になって帰っていくのだから、育児ってやっぱ大変なんだなと思った。
